役者の稽古
10時から17時まで役者の稽古をした。芝居の稽古じゃない。役者の稽古だ。役者ってのはどんなもんなのかを探るための稽古だ。オレは普段演出しかやらないから、いろはのい、みたいなところからやらないとわからないんだ。長年そればっかりやってきた報いで、もう染みついちゃってるからさ、演出の見方、感じ方が。
全然違うんだな、役者と演出は。
演出はね、引きで芝居を見るんだよ。外側から見る、と言った方が良いかな。例えて言やあ、立てに2つに分割された画面を同時に見ている感じだ。左の画面には舞台全体を薄ぼんやり見える引きの映像が、右半分の画面にはその時々でオレが見たいと思った舞台の局所がアップで映っている映像が、同時に見えている感じ。それだけじゃない。耳では音の入り具合や音量をチェックしてるし、意識の何処かでは照明の照り具体にも同時にチェックを入れてる。返しの時には改善点を具体的に指摘する。どこが上手くいってないから舞台全体の感じがイマイチなのか、間違ってもいいから瞬時に判断し、役者やスタッフに分かる言葉で説明する。オレはこうしてほしいんだ、と自信なんか全くなくても、ハッタリでもいいから自信満々なフリして役者に、スタッフに要求する。良くなるなら、勇気を持ってあらゆる可能性を試す。そのためには決然とワガママを言う。これがオレがずっとやってきた演出の仕事だ。
役者は全然違った。基本、自分にしか意識がいかない。視野が狭くなった感じ。でも、狭い分、深く深く自分を探らなきゃいけない。自分のからだ、自分の声、自分の気持ちの動き・・・意識は自分にひたすらフォーカスしてゆく。芝居全体がどうなろうが知ったこっちゃない。要は自分、興味の対象は自分だけ。これが、今日やってみて感じた役者って役割だ。
演出をしているオレが大嫌いなのはね、自分がかわいくて仕方ない役者だ。いるんだよ、そういう役者が。絶対コイツ、自分大好きだよなあってのが演技の端々に透けて見える役者ってのが。でも、今日やってみて分かった。役者ばっかりやってりゃあ、そりゃあ、その弊に陥るよ。ヤバいな、オレも気をつけないと。いい気になってやってると、オレも○○(自分大好きな演技が鼻につく役者の名前を入れてみてください)みたく、自己愛の化身になっちまうぞ。
今日長い時間掛けて、役者の稽古をしてみて良かったよ。役者初心者のオレだけど、絶対にその轍だけは踏むまいと心に誓えたからさ。このブログを読んでくれてる皆さん。11月21日(土)、22日(日)、オレの役者っぷりを観に来てくれ。こんなこと書いたわりに、オレが自分に酔ったような演技をしてたら、どうぞ鼻で笑ってやってください。

