ぼくの好きな歯医者が改装してしまった
オレの通っている歯医者がこの夏に店内を改装した。息子に代変わりで変えたようだ。改装してから2度ほど行ったが、どうもまだ馴染めない。高校の先輩で、オレは歯医者の先生が大好きなのだ。その先生に診てもらえるうちは通い続けると決めている。でも馴染めない。なんでだろう?なんで馴染めないんだろう?どこが気になるんだろう?わからん。わからんから改装後の今現在の歯医者の様子を書いてみることにする。
手をかざすと自動で入り口のドアが開く。入り口の真正面に受付がある。入り口と受付は、下足箱(右手側)と壁(左手側)に挟まれた一本道でつながっている。一本道は、人が2人並んで歩けないほどの幅しかない。受付で診察券と保険証を見せたら、くるっと向きを変えて、入り口の通路と並行して設えられている待合スペースで診察の順番を待つ。待合スペースは細長い一本道の形状で、外壁に沿って一列に10脚ほどの椅子が並んでいる。お客(患者)は、診察室の方向に顔を向け、皆同じ向きで座る。座って目を上げると、受付の背後にあるレントゲン室の赤いランプが目に飛び込んでくる。赤いランプは何故かずっと点っている。新装を機に医院の中の壁という壁は白一色に統一された。くすみのない、本当の純白にだ。純白の壁に灯る一点の赤は、いやでも目を引く。待合スペースだけ天井が高くなっているせいか、音や声がひどく反響する。反響が気になって身動きするのもためらわれてしまう。結句、お客は赤く点るレントゲン室のランプを凝視しながら、石像のようにじっと固まって診察の順番を待つことになる。呼ばれて診察室に入ると、診察室の中も一点の曇りもない真っ白で、3台ある診察台はそれぞれの間の空間をやけに広くとって置かれている。真空に診察台だけがフワフワと浮遊している感じがする。診察を終えると歯科衛生士がタブレットを持ってくる。診察台に座ったまま次回の診察日を決める。受付で診療費を払い、入り口までの一本道を歩いて、手をかざして自動ドアを開けて表に出る。
なるほど。改装のコンセプトは、①自動化、②直線を意識した無駄のない動線、③真っ白な、余分なモノのない空間、なんだな、たぶん。改装前の、オレの馴染んだ医院は、①入り口も受付も全部手動で、②受付も待合スペースも全部ごちゃっとしていて、動線を決めよう何て意図をお客にさらさら感じさせず、③診察室に入っても、色彩が反乱して、診察に関係ないものがゴチャッと置かれている空間で普通の家の開いた空間にたまたま診察台が3台置かれているだけ、という感じだった。随分、というか真反対な感じに変えたんだな、敢えて。なんでだろう?なんで真反対に変えたんだろう?
どれほど馴染めなくても、高校の先輩の歯医者が診てくれるうちはオレは通い続けるだろうし、人間何にでも慣れる生き物だから、きっと今の医院の感じにもそのうちに馴染んで違和感を感じなくなるのだろうが、慣れて感じなくなることもまたオレは怖ろしいので、オレだけは今感じている違和感をずっと覚えていてやろうと心に決めている。
似てたんだよ。改装前のゴチャッとした、整理が付かない、ある種猥雑な感じが、オレの一宮スタジオと。妙に整理されて、つるっとした感じよりも、なんだか豊穣でオレは好きだったよ。

