自分のこと③

自分のことの3回目だ。どんだけ自分好きやねんと言われそうだが、おれは自己愛の化身でもなんでもない。ただ、なんでこんな人間が出来上がってしまったのかという、その1点にはとても興味がある。まあ、どうやったらおれのようなあかん人間が出来上がるかのサンプルを覗き見るくらいの気分で読んでもらえたらありがたい。

中学校で胸くそ悪い思いをしたから、高校生になったら学校には頼るまいと固く決心していた。おれは高校に入学してすぐに一人で本屋に行って、勉強の仕方とか大学合格体験記の類をありったけ買い込んだ。すべて読んだ。読んで、多くの難関大学合格者が共通して使った参考書を割り出し、3年間の受験勉強のタイムスケジュールを作った。そして独りで勉強を始めた。誰の世話にもならない。先生には2度と媚びない。入試当日に点数が取れて、行きたい大学に合格すればおれひとりの手柄だし、合格できなかったなら、それはおれひとりがダメで、バカだったってことだ。すっきりしる。気分がいい。

そんなふうだったから、おれは教員なぞ相手にしてなかったが、高校に入ってからも教員の方からおれに突っかかってくることが何度かあった。いまでも腹の虫がおさまらない思い出をひとつだけ書く。

高校2年秋、体育大会の日。おれは体育委員長として朝礼台に上がって、全校生徒の前でラジオ体操をした。その日、おれは赤白帽子を忘れた。赤白帽子ってわかる?表が赤色、裏が白色の、リバーシブルで使える帽子だ。そういうのが昔はあったのだ。おれの通っていた県下有数の進学校では、みんなで(男子だけだったもしれない)赤白帽子を被って、体育的行事を行うことになっていた。

おれが朝礼台から降りると担任の教員が待ち受けていた。「職員室に来い」とおれにこっそり言った。おれは素直に担任について職員室に行った。体育大会が始まっていて、全校生徒、全職員がグランドに出ている。職員室の中にはおれと担任以外、誰もいなかった。職員室に入るや、担任はいきなりおれに往復ビンタを喰らわせた。そして担任は憎々しげに言った。「おれに恥をかかせやがって」。それだけ。たったそれだけの思い出だが、40年(!)経った今でも、その日のがらんとした職員室の様子や、遠くで聞こえる体育大会の歓声や、担任の吐き捨てるような物言いを、おれは忘れることができない。

あのね、おれが赤白帽子を忘れたことが、なんであんたの恥になるわけ?持って来なきゃいけないものを忘れて、ああしまったと思ったり、不利益を被る可能性があるのはおれ自身で、アンタじゃないじゃん。それからさ、ビンタでもなんでもしたけりゃあ、みんなが見てる前で堂々とすればいいじゃん?なんで誰もいない職員室でこっそりやるわけ?

担任は理科の教員だった。その日以来、おれは理科という教科が大っ嫌いになった。何度赤点をとっても死んでも勉強するかと、その日おれは心に決めた。ぶったヤツや忘れるが、ぶたれたぼうは一生忘れない。このブログ、どんな人が読んでるか、おれはさっぱりわからないまま書いているが、もし、教員が読んでたら是非言いたい。生徒・児童には心して接しましょう。先生自身の、保身とか、見栄とか、小心さがバレないように心して接しましょう。若い子はちゃんと見抜きます。見抜いて先生に、そして大人に失望します。そんな思いを学校でさせちゃダメです。だって学校って本来は、「ともに理想を語る場所」なんですから。