GW(ゴールデンウイーク)

GW中にこれを書いている。体調が悪い。喘息の発作で初めて病院に運び込まれたのもこの時期だった。

体調が優れないので、出かけることもない。溜まった仕事を黙々と片付けている。

喘息の具合のせいか横になるのがシンドい。眠りも浅い。すぐに目が覚めてしまう。

からだを起こすと少し息が吸いやすい。起き上がって眠くなるまで本を読んで過ごす。

本を読むのは好きだ。

おれの実家には本が山ほどあった。父親がいわゆる蔵書家で、家中の壁面は本で埋め尽くされていた。決して裕福な家庭ではなかったが、本は欲しいだけ買ってもらった。父親は珈琲を飲み、煙草を燻らしながら、ロッキングチェアに腰かけて本を読むのが日課だった。おれはその姿を見て育った。本が家にあること、日常的に本を読むことが、空気を吸うのと同じくらい、おれには当たり前のことだった。

文学、歴史、哲学、民俗学、そして演劇・・・。生きるのに役に立たない本ばかりが家の中にあった。セリーヌもサルトルもドストエフスキーも父親の本棚から勝手に借りて読んだ。太宰治も大杉栄も柳田国男も本棚にあった全集で読んだ。高校生の頃、担任に大学でどんな勉強がしたいのだと問われ、「役に立たない人間になる勉強がしたい」と答えたことをはっきりと覚えている。願いが叶って、大学では文学を学び、演劇などという、もっとも効率がわるく、役に立たないジャンルの仕事をする身となった。「役に立たない人間になりたい」自分で考えついたことだとずっと思っていた。が、なんのことはない。物心ついた時から役に立たない本に囲まれて育ったせいで、思いついただけだったのだ。おれの喘息も、小さい頃から吸い続けた本のホコリに、その遠因があるのかもしれない。環境とは怖ろしい。拭い難く、人の一生に刻印される。

世の親御さんたち、大きなお世話かもしれないが、あんたたちが本を読むと、子どももきっと本を読む子に育つ。百歩譲って読まなくてもいい。手当たり次第に本を買って、家の中を本だらけにしておくといい。そしたら、少なくとも本というものに抵抗を持たない子に育つ。

GWとかいって、コマーシャリズムに踊らされて消費ばかりしてないで、まずはお父さんやお母さんが本を読む習慣を身につけるといいのに。本はいいよ。読む習慣は一生の宝だ。だって読書は孤独に耐えるよすがとなるからね。