実録・学年主任挨拶
NPOの活動と二足わらじで高校に勤めている。学年主任を長く務めている。
卒業生を3月に出した。休む間もなく4月からは1年の学年主任になった。
4月6日の入学式で、保護者に挨拶した。
『ご入学おめでとうございます。
高校生活スタートの日です。何を目標にしてこの学年をやっていくかをお話します。
目標はたった一つです。
自分で喰っていける人間になれ。
これだけが卒業までの目標です。
自分で金を稼いで生活する。親に養ってもらうのではなく、生活保護に頼るのではなく、頑張って働いて、人交わりして生きていく。できれば、自分だけではなく、大切な人も喰わせていけるようになる。
これが目標です。
なら、どうやったら自分で喰っていけるようになるか。
大切なことはたった二つです。この二つのことができれば、きっと自分で喰って行けるようになります。
まず一つ。時間を守れ。
時間を守っていれば、人に信用される。そうすれば、何とか世の中に取り付いていけるでしょう。
ふたつ目。人の話を聞け。
人の話を聞けるようになれば、騙されないで済む。人交わりをして、自分で喰ってゆくというのは厳しい営みです。どこに罠があるかわかりません。聞く姿勢を養うこと。これがハードな世の中を生き抜くチカラ、自分で喰っていくチカラに直結すると私は信じます。
高校卒業後も人生は続きます。長い人生の礎となるチカラを何とか高校3年間で身につけさせたいのです。
もう一度繰り返します。
自分で喰っていけるようになれ。そのためのチカラを高校で身につけよ。
これが私の、私の学年の目標です』
おれが勤めている高校は、在校生の約6割が、中学や前の高校で不登校を経験した生徒だ。外国籍の生徒や、特性のある生徒もいる。
何とか生き延びてくれ。そのためのチカラを高校でつけてくれ。足掻く中で、おれは演劇と出会い、演劇表現のレッスンを創り上げた。
この学校に赴任したこと、この生徒たちと出会ったことが、今のおれを作ったといってもいい。
実際に話した挨拶をここに記したのは、自分の一番根っこにある思いを、おれ自身が再確認したかったからだ。
読んでくれてありがとう。