オレのリベラルアーツ③(のつもりが話が逸れてしまった)
年が明けた。そろそろ来年度のことを考えなきゃならん。その前に今年分の成績をつけたり、生徒の資料をまとめたりしなきゃならん。なんだか落ち着かない時期になった。
生徒も落ち着かない。身の振り方を決めなきゃならない子が、ぞくぞく現れるのもこの時期だ。全日制では考えられないことかもしれないが、ウチの学校では、1日の、1クラスあたりの欠席数が平均で5人くらいだ。それだけ休んでいれば、年度末になって欠課時間数(=授業を休んだ回数)が嵩んで単位が取れない生徒がどんどん現れるのは必然で、単位を取れなきゃ進級できない、卒業できない。さあどうする?ってことになる。そんなふうになった生徒一人一人とじっくり話しながら、彼らの行く末を決めてゆくという仕事が、この時期になると増えて来る。定時制の教員ならではの忙しさだろう。
しかし何故学校を休むのかなあ?
よくあるのがスマホを見るのをやめられなくて、寝るのが朝の4時くらいになっちゃって、朝起きられず、結局ズルズル休んじゃう、って生徒ね。
それから、人目が怖くて、集団に馴染めず、辛抱の限界になって、いよいよ教室に足が向かなくなった、というパターンもあるかな。
あとは・・・ウチの学校は定時制だから,アルバイトは勿論やっていいんだ。生活費やスマホ代、学校の授業料を賄うために始めたバイトがいつの間にか生活の軸になっちゃう。店も人手不足だから、どんどんシフト入れられちゃう。そうなれば、もう学校なんか、気分の上ではオマケみたいなもんだ。学校行かなくても、家に引きこもっているわけじゃない。バイト先に行けば、店長やいっしょにバイトしている仲間がいる。寂しくない。バイトやった時間分だけ、時給ももらえる。小金がもらえて、自分を自分だと認識してくれる人がいる。で、通わなくなる。こういうパターンもあるよ。
まだあるぞ。外との付き合いがやめられなくって、高校生の枠に入ってるフリをするのがだんだんシンドクなって、身を引いていく生徒もいるかな。
忘れてた。長期の休みの後は、やっぱり欠席が増えるな。冬休み、自分のペースで過ごしちゃって、3学期になって学校が始まっても上手くギアチェンジできなくて、学校休んじゃう。今年は特にインフルエンザとか流行ってるよね?インフルに罹るとだいたい1週間は出席停止になる。それでまた学校に行くキッカケを逃しちゃったり。
ウチの昼間定時制の、何割かの生徒にとっては、学校に毎日通うこと自体が、とにかく難しいんだ。「2っていう数字がつく時期が危ないよ」って生徒にも保護者にも、オレはいつも言う。今、オレは2年の学年主任だが、2年生の2学期、やっぱり難しかったね。たくさんの生徒が進路変更をした。あれほど言ったのにな。2年生に上がったすぐの時に、あれほど念押したのにな。「2年2学期は難しいから気をつけろ」ってさ。
念の為言っておくけど、高校を出ることがマストだなんて、オレはちっとも思っちゃいないよ。中卒だって、すげえ人いっぱいいるし。でもさ、高卒の資格って、持ってるとちょっとは生きてく足しになるからね。仕事探す時に選択肢が広がるし、給料だって中卒より高いところからスタートだし。人間死ぬまで生きてかなきゃならないんだ。自分で喰っていけるようになってさ。オレ自身は、大学ずっとサボっていて単位が全然とれてなかったんだよ。4年生も終わりになって、さあどうする?5年生になって大学生続けるか、それとも中退するかって決断を迫られた。そん時に、自分が何にも持ってないことに気づいて、気づいたら急にものすごく怖くなって、オレは5年生になって大学を続けることを選んだんだ。オレはスカッと大学中退できなかった、ビビりの人間なんだよ。よっぽど怖かったんだろうな、あのときのゾーッとした感覚は今でもよく覚えてるよ。自分がそんなふうだったからかな、なんとか高校卒業までたどり着かせて、自分で喰ってけるようにして送り出したくて、オレはずっと定時制の教員やってるんだよ、きっと。
自分の学年の生徒ってさ、1年生の最初からずっと見てきてるじゃない?1日いっしょに過ごせば、1日分の記憶が残るわけよ、球技大会、ものすごく頑張ってたなとか、修学旅行のユニバで集合時間に遅れて叱ったよなあとか。その記憶が蘇るんだ、生徒が学校やめる段になるとね。それがシンドいな。それくらいの執着っていうかな、言葉にするのも恥ずかしいけど、愛着っていうかな、それは自分の学年の生徒に対しては、オレは持ってるよ。
なかなかうまくいかないね。うまくいかない、うまくいかないって毎年思いながら、気が付くと20年も昼間定時制で過ごしちゃった。
もちろん、生徒が卒業するように、成長するようにいろんな手は打ってきた。基本的な生活習慣の確立に向けては○○、スマホ依存対策には△△、学校に来るモチベーションを高めるためには□□、とかね。このブログを読んでる人の中に学校関係者がいて、○○や△△や□□を知りたい人がいたら、連絡してくれ。オレはこうやってるよって教えるから。参考してくれれば嬉しいからさ。
何の話だっけ?あ、そうそう、リベラルアーツの話をしてたんだった。リベラルアーツ国語って科目も、ウチの生徒が、人と接することに怯えなくなったり、集団の中でビビらなくなったりするために作ったってとこはあるよ。それを言いたくて書き始めたんだけど、気付いたらマクラがずいぶん長くなっちゃったな。続きはまた次回書きます。
そうそう、オレのリベ国の授業がJAPAN TIMESって新聞に取り上げられたんだよ。新聞見てビビった。ものすごくおおきく扱ってくれててね。英語で読むと改めて自分の授業の特質がはっきりしたかな。英語って、なんていうかな、クリアな言語なんだなって改めて思ったよ。