『帰郷』、大事な芝居。
このブログは毎週土日に書くと決めています。今週末は『帰郷』の公演があります。前もって書いておくことにしました。
今日、中日新聞の夕刊に芝居の紹介記事が載りました。とても良い記事でした。チケットが動くといいのですが。このブログを読んでくださっている方で、お時間が取れる方がいれば、是非観に来てください。私が全公演、ナビゲート役を務めます。
一宮に活動拠点を構えて、3年が経ちました。一宮スタジオにも、ほんまち通り商店街にも、ようやく馴れてきたみたいです。お菓子を買って帰る。おいしい和菓子屋さんも見つけました。お昼を食べに行く喫茶店も、決まったところができました。身構えずに店の中に入り、赤い大きなソファに座るとホッとするようになりました。シャッター街、時が停まったような時代から置いてきぼりにされた街。初めはそう思っていました。この頃では、「時代に置いてきぼりにされた感」を嬉しく思うようになりました。
一宮スタジオそのものについても、見方が変りました。全部手作りで作った粗末なスタジオ。客席数20しかない小さなスタジオ。何故か天井から雨漏りするボロいスタジオ。決して口には出しませんが、ある種、卑屈な気分をずっと抱きつづけていました。それが、この頃では、そのボロさが誇らしく思えて、自慢に思えるようにすらなりました。アングラ芝居やってんだ、と胸を張れるようになりました。
芝居そのものの嗜好も変わってきました。自分は芸術やっているんだ、分かる人に観てもらいたいし、評価されたい。心の奥底でそう思っていました。いつからでしょうか、そんな思いはさっぱりなくなりました。人生を一生懸命に生きている、普通に暮らしている人に観てもらえるような芝居を作りたいと、心の底から思うようになりました。演劇関係者ではなく、普通に一生懸命生きている人が楽しみにして足を運んでくれる芝居、観終わった後で、人間っていうのも満更捨てたもんじゃないよなって思えるような芝居、よし、明日も元気で頑張ろうと思えるような芝居、例えばカップルで観に来て、「な、よかっただろ?」と愛する人の肩をそっと抱くお手伝いができるような芝居、そんな芝居が創りたいと心の底から思うようになっています。
今回の『帰郷』は、ようやっと自分の進むべき方向が定まった私の、これからの演劇活動のスタート地点となる芝居、大事な芝居です。