リベラルアーツ国語について(方法)
今週、生徒指導で急に忙しくなった。ブログは毎週日曜日に必ず書くと決めているが、そんなこんなで、書き言葉を連ねてゆくのがしんどい。どうしたらいい・・・そうだ、話せばちょっとはラクなんじゃね?そりゃあいいや・・・。ということで、過日研修会におじゃました時に仲良くなった他校の先生に、ここまでのブログを読んだうえで、電話でオレにインタビューをしてもらった。それを文字におこして、今日のブログとした。中日新聞、ジャパンタイムズに記事が載って以来、視察がどしどし来るようになったし、研修会の講師に呼ばれることが輪をかけて増えた。ありがたいことだ。呼ばれればどこへでもいってレッスンをする、授業をする。やりたくても鼻もひっかけられない時期が長かったから、お声掛けしてくれたら決して断らない。これがオレのポリシーだ。インタビュアーは、経験など全くないのに、今年から急に演劇部の顧問にはめられてしまった、20代の先生である。
ー前回のブログに、リベラルアーツ国語の目的として、『人目、他者のまなざしからいかにして自由になるか』とありましたが、授業のやりかたって言うか、目的を達成するための手法を教えてください。
やりかた?
ーそうです。
ききたい?
ーぜひ
演劇の基礎レッスンを、ウチの生徒向けに変形させたエクササイズをやるんだ。この前の研修会で先生たちにやってもらったみたいなヤツをやるんだよ。
ー演劇、ですか・・・
そう。
ーあの・・・聞いてもいいですか
いいよ。
ー人目が怖くなるような経験をしたせいで、薄い膜みたいなものを自分のまわりに張り巡らしてる生徒さんが、刈谷東高校にはいっぱいいるんだって、たしか前々回のブログに書かれていました。
そうだよ、いっぱいいるよ。
ーそんな人目が怖い生徒さんが、演劇ですか・・・。あの、わたし、まだ今年から顧問になったばっかりでよくはわからないんですが、演劇って、人に見られたり、人といっしょにつくったりするジャンルですよね。その・・・なんで、っていうか、それって、そういう生徒さんにとってはさぞかしキツイことなんじゃないかと・・・
あのね。
ーはい
人とのかかわりで傷ついた人間は、人とのかかわりでしか回復できない。
ーえ?
例えばさ、勉強ができん、っていうコンプレックスを持ってる生徒がいるとする。そいつがそのコンプレックスを解消するためにはどうすればいいんだ?
ー・・・
例えばさ、どうせおらあバカだから、筋トレやろ、筋トレ。ムキムキになって女をヒイヒイ言わせたろ。と、そいつは思いついたとしよう。で、思いついたが吉日ってんで、その日から毎朝毎晩筋トレやって、プロテイン飲んで、念願かなって筋肉の鎧を身に付けたとしよう。さて、ムキムキになったそいつは、勉強ができんってコンプレックス自体は解消できただろうか。先生、どう思う?
ー解消できない、ですね。
解消できないんだよ。勉強できないやつが、勉強できないってコンプレックスを解消するためには、筋肉つけたって駄目なんだよ。ガリガリ勉強するしかない。で、勉強できるようになるしかないわけ。そんなことわかりきったことじゃん。なら、人目が怖いやつが、その気持ちから自由になるためには、と言ったら・・・
ー人目が怖くなくなる、しかない・・・
そうだよ。だから、人目が怖くなくなるために、“人とのやりとり”を成立基盤とする演劇ってジャンルの基礎レッスンを、授業の手法として用いるわけだ。人目が怖いっていう自分から目を逸らしても、その気持ちから自由になれないからさ。
ー生徒さんが怯えないですか?
何に?
ー人とのやりとりをする授業に、です。
怯えるに決まってんじゃん。さ、いまから人とやりとりするぞ!なんて言ったら、ビビッてみんな授業休んじゃうよ。だから、ちょっとずつちょっとずつやってくんだよ。遊びみたいな、ゲームみたいな体裁を取って、ちょっとずつ、ちょっとずつね。リベ国っていうのは、刈谷東高校の3年生が全員受ける授業なんだよ。しかもクラス単位でやる授業だから、人数も30から40人くらいが一斉に受けるわけ。それだけ生徒がいれば、いろんなやつがいるさ。そいつらを誰一人こぼさないように、ちょっとずつちょっとずつ、でも、根っこの部分から確実に、人とのやりとりの成立に向かってやっていくんだよ。ほら、にがい薬って飲みにくいじゃん?そういうときは、糖衣錠にしてにがくなくして飲ませるでしょ?あんな感じだよ。だから、大変なんじゃん。だから難しいんじゃん。でも、オレさ、今年1年間やって実感したよ。
ー何をですか?
さっき言ったことだよ。人とのやりとりで傷ついたやつは、人とのやりとりを通してしか回復しないってこと。だってな、高校出たら、自分で喰ってかなきゃいけないやつだってたくさんいるんだよ。自分で喰ってくためには、社会になんとか取り付いていかなきゃなんないだろ?でだ、社会って何だって言ったら、それは人交わりのことだよ。友だち、同僚、上司、部下、彼女彼氏、家族・・・。人は人の中で生きていくしかないんだよ。
ー・・・
だから、人目が怖いとか言ってちゃいけないわけ。そんな猶予ないわけ。高校が最後の教育機関ってやつだって、たっくさんいるんだから。高校って、本来そこまで仕上げる使命があるって、オレは思ってるんだ。
ー・・・
なに?
ーえ・・・
なんで黙るの。いいよ、なんでも聞きなよ
ーそんなこと可能なのかなって
先生さ、研修会で受けたじゃん、オレのレッスン。あれ、どうだったの?
ーすごく楽しかったです。知らない先生ともあの研修会がキッカケで仲良くなれたし。それに・・・
うん?
ー学校に持ち帰って、教えていただいたレッスンメニューを部活でやってみたんですけど、みんな急に仲良くなったっていうか、よく意見言うようになったっていうか・・・
でしょ。でもな、ウチの学校の生徒は手ごわいからさ、そんな簡単に人目から自由になれるわけないんだ。1年間、ちょっとずつちょっとずつ、やりとりをするレッスンを積み重ねて行って、ようやく変わっていくんだ。オレさ、リベ国の授業を受けた生徒の感想、一年分全部取ってあるんだよ。読むとな、感動するわけ。自分の授業の感想読んで、感動するなんてバカみたいだけどな、実際、感動するんだよ、オレはうまく糖衣錠にくるんで苦い薬のましてたつもりになってたけど、生徒たちは、今飲んでるのは、ホントは苦い薬なんだって、ちゃあんとわかって取り組んでたんだな、って感想読むとよくわかるんだ。だから、感動しちゃうんだよ。えらいな、おまえら、わかった上で、腹括って授業受けてたんだなって。
ーあの・・・
なに。
ーわたしにもできますか、リベ国
おう、やってくれよ。是非。1年間の指導案が全部あるから。オレ、今年1年、毎時間指導案書いたんだ。評価基準もあるしな。いやしくも授業だからね。体系と1回1回の授業の指導案と評価の観点ね、これがないと授業とは言えんだろ?それにな、今年のリベ国は、おれ以外の、演劇なんて全然やったこともない先生も担当してたからね、面白いな、必要だなって先生自身が思って、なんのためにやるのか、って狙いがちゃんとわかってれば、絶対できる。オレさ・・・
ーはい?
一宮にスタジオ持ってんだよ。そこで、4月からリベ国の講座やろうって思ってんのよ。先生も来て、いっしょに勉強せんか?