歯を抜いた。
歯を抜いた。昨日から急に歯茎が腫れた。右上一番奥。痛くて仕方なくて、朝、急に清水に連絡を入れて、演劇トレーニングジムを休ませてもらった。
清水、ホントにごめん。お客さんもホントにごめんなさい。
いつも行く歯医者に電話して、急遽診てくれと頼み込む。歯医者はオレの高校の先輩だ(随分と上なので在学中に直接面識があったわけではないが)。
オレはその歯医者をとても気に入ってる。行くと診療よりも、おしゃべりをしている時間のほうが長い。でも、その話がまた面白いんだな。
「慢性的な歯周病であったのだが、何かの原因で急性になった。その原因はわからない。歯磨きが下手くそだったのかもしれん。疲れかもしれん。ストレスかもしれん。その特定は難しいし、こうなってしまったら、まずは患者の主訴に対応するのが医者の責務だ」医者は厳かに言った。その後でまた、コロっと調子が変って、楽しくおしゃべりしたけどね。
ストレス、という言葉にオレの耳はピクピクと反応した。まさに昨日、学校でストレスフルな出来事があったのだ。たしかにストレスや疲れがたまると、からだの中でも弱い部分に影響が出る。オレの場合は、喘息と、そして歯だ。疲れると昔からよく歯茎が腫れていた。
しかし、大変不愉快だ。もし、だぞ。ストレスで歯茎があんなに腫れて、その結果大切な歯を一本抜いたとしたら、そのストレス原因を創ったヤツをオレは許すことができない。これまでオレのストレスは、主に自分の仕事が溜まっちゃって、うう、もうどうしたらいいんだあー、って感じのものだった。要するに自分にストレスフルになる原因があったわけだ。それならオレは我慢できる。だって、自分が頑張ればそれで済むんだから。でもなあ、金曜日にオレにかかったストレスは、全然自分に原因のない種類のもの、ストレートに言えば、他人との係わりに起因する種類のものだったのだ。うーん。人間関係って難しいよね。あんまり気にするとまた歯がなくなっちゃう。自分以外の人に影響受けて歯がなくなるなんて、オレは自分のプライドが許さない。だってオレは、人間関係のワークショップや授業を本業でやってる人間だからね。
教員って仕事にストレス感じたことなんてこれまで一遍もなかったのに。周りが変ったのか。オレが年取って人を許容できなくなったのか。はたまた人間のかかわり方自体が、コロナ以後、変質してしまい、それにオレがついていけてないのか。ここはひとつ本腰入れて、人との距離感を考え直さないといかんのかもしれんな。そうそう、歯が抜けるときの、あのメキメキッていう音、オレ、何回聞いてもホント、怖いんだけど、みなさんは怖くないですか?